2013年4月22日月曜日

電王戦感想:将棋の大盤解説は自転車レースの中継に似ている


週末土曜に、将棋:電王戦 第5局が行われました。
三浦八段(先手) V.S. GPS将棋(後手)

ニコニコ生放送では朝9時半頃から始まり、お昼休みを挟んで19時過ぎの対局後インタビュー〜記者会見まで丸々一日放送していました。

今回はプロ棋士 V.S. コンピュータ の大将戦で、そこまでに至る人間ドラマあり、大注目の対局でしたが、正直午後から(あるいは夕方から)見始めればいいかなーと考えていたのだけれど、9時半にちょっと観たらPVが格闘技のような盛り上げ方をしていて、離れられなくなりました。

将棋の対局は長丁場で動きも少ないので、視聴者を飽きさせないようにするのは結構大変。
大盤解説は屋敷伸之九段、矢内理絵子女流四段を中心に様々なゲストを交えて楽しい会話が続いてましたが、これは何かに似ているなーと思ったら、そうだサイクルロードレースだと思い至りました。

共通点をピックアップしてみよう。

【共通点】
・長時間の放送で、大抵は解説者が雑談してる
・基本的に展開に動きが少ない
・ひとたび動き出したらかなり激しい

などなど。

違った点は、サイクルロードレースは放送中は選手を映し続けているが、将棋は(動きも殆ど無い)対局室ではなく、殆どをニコファーレの会場を映していることでしょうか。
プロの将棋対局は一般人にはわかりにくいところが多く、解説が入ることは大変有難い。
おかげさまで、長時間飽きることなく楽しめました。

ただちょっと残念だったのは、大物ゲストとの対談が始まると、そっちがメインになってしまい盤面が大きく動いてもなかなか解説に戻れなかったことかな。初心者向きとはいえ、メインは将棋の対局なので、そのへんはニコニコ対局の今後の課題でしょうか。


***
対局の結果は、報道されている通り三浦八段の完敗でした。


プロ棋士の方々がどういう気持ちでこの大一番の対局に臨まれたのかはわかりませんけど、将棋ファンはおおむね「A級の三浦八段なら負けないだろう、2勝2敗1引き分けで一件落着」てな感じで楽観的に考えていたようで、ショックが大きい模様です。
屋敷九段はワリと冷静に「見た目ほど差がある対局ではなく僅差であり、また一度の敗北が全ての結果につながるわけでもない」的な感想を投了後の感想で述べていた。

そして、コンピュータ側の代表も面白い感想を述べていた。
こんな感じ。





僕の感想としては・・・

いつかは辿る道であり、それが今だった、ということかと。
電王戦をきっかけに、久しぶりに将棋指したくなって、iPad にアプリ入れました。
「矢倉」を組む定跡を勉強中です。(笑)


来年、第3回があるなら、どんな対局が組まれるか楽しみです。


2013年4月14日日曜日

とりあえず、読み終わった。多崎つくるの巡礼の年

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』


読み終わりました。

金曜の夜に購入。
寝る前に読み始め、土曜の夕方~夜に再開、そして日曜の朝に読み終わりました。
週末にサクッと読み終わるのはいつもの通り。

今回は月が2つあるわけでもなく、カーネル・サンダーズが啓示を与えるでもない、ワリと現実路線の作品でした。
発売前はタイトルがいきなり謎でしたが、読み始めて30秒くらいでだいぶ解決します。
『多崎つくる』が主人公の名前でした。
初期三部作に戻ったような「喪失と孤独」がメインテーマであり、それでも昔の小説とは全然違う文章を展開する、さすがのハルキワールド。

もう50万部くらい本屋に並んでいて、結構売り切れ続出みたいな情報が流れてきます。
ウチの近所の本屋も売り切れていました。Amazonも然り。

発売前にはタイトル以外の情報は殆ど出て来なかったので、数十万人のほとんどは「作者名」と「タイトル」だけで購入したのだと思われます。定価は1,700円+消費税。

『1Q84:Book3』 ならばBook2が、続きが気になるクリフハンガーな展開で終了したため、発売と同時に売れるというのも良く理解出来ますが、タイトルと作家の名前だけでこれだけ信頼されるのも凄いね。ちょうど宮崎駿監督が、「もののけ姫」や「千と千尋」でとりあえず作品作れば客は観に行く状態だった頃と、同じ感じでしょうか。

正直、万人受けするようなタイプの作品でもない気もする。
ハルキ中毒にまだなっていない人の感想をぜひ聞いてみたいものだ。
彼らは次作もまた発売と同時に買いに走るのだろうか?
(僕はそこまでブームは続かないような気がする)


***

物語の終盤、こんな内容の話がちらっとでる。

『90年代、新宿駅のラッシュアワーで階段を下る人々が、下を向いてみんな暗い表情をしている写真が米国の新聞に取り上げられた。それは裕福であっても不幸そうな日本人を描いた写真として有名になった。でも、階段を下る時って誰だって下を向くよね(じゃないとあぶない)。

それってフェアじゃないよね、というような内容だが、これは前に読んだことがある。
『やがて哀しき外国語』だったと思うが、彼自身のエッセイだ。
自分自身のエッセイの焼き直しを物語の終盤に差し込むのも珍しく、ちょっと印象に残っている。